私の前世は、ドイツ人。
なぜ?と、聞かれても、「そう思うから」としか、言いようがない。
でも、何故だかそう思う。
私は、毎月1度、山の中にひっそりと立つ洋館の病院に通っている。
もう、7年かな? 今日は、雨模様。
落ち葉を踏みしめ、ガーデニングを楽しみながら、ゆっくりと玄関に向かった。
そこに、彼はいた。
碧い海のような瞳で、まっすぐ私を見つめている。
吸い込まれそうな瞳に、めまいがした。
「あの子、ずっと、あそこにいるのよ。」 「誰かを待っているみたいだね。」 患者さんや看護婦さんが、口々に言っていた。
私の診察を終えた、お医者様も玄関先でのざわざわに気付き、「不思議だね」と言っていた。
私は、薬を受け取りながら、海のような瞳を思い出していた。
玄関を出て、「あら?まだ、待っていたの?風邪をひかないようにね。」と、声をかけ、駐車場に向った。
漢方薬の袋は、かさばる。
小雨の中、転ばぬように、駐車場へと急いだ。
あれ?彼が付いてきている。
迷子なのかな?どうしよう…そう思いながら、車のキーを開けた。
その途端、彼は、当たり前のように、車に乗ってしまった。
降りるそぶりがないどころか、私の膝に乗ってしまった。
私は、困り果てて、先ほどのお医者様に電話をした。
「ポスターを作って、病院に貼りましょう。迷い猫の。それまで預かっていてください」「はぁ…」 息子に電話した。
「とにかく、つれておいでよ」「はぁ…」 車を走らせ、家に帰ると、これまた「ただいま」というように「にゃー」と一鳴きして、玄関から、入っていった。
とりあえず、かかりつけの獣医さんに診てもらった。
「健康状態に問題なし。でも、こういうケースは、珍しいね。猫は、警戒心の強い動物だから…こりゃ、運命の出会いだな」 「えーー、運命ですかぁ?」 ゆっくり、お風呂に入れて、毛並みを整えた。
碧い瞳は、私をじーっと見ている。
不思議。
3カ月たっても、飼い主は見つからなかった。
でも、見つかったとしても、もう、離れられない。
彼の碧い瞳から、目が離せない。
眠るときも、私に腕枕を要求し、起きている間は、ずっと、横にいる。
ピアノ弾くと、長い尻尾でリズムをとる。
私の帰りが遅いと、玄関で、正座?をして待ち、「にゃーにゃにゃー」とひとくんだり、文句を言う。
人間だ…不思議な猫である。
運命か…初めて会った時から変わらない碧い瞳。
吸い込まれそうなほど、私を見つめる。
出会いが、運命なら、私たちは、以前もどこかで会っていたのかな… だとしたら、「前世」かな?そう、彼に向かって話すと、チュッと軽いキスをしてきた。
私の前世は、ドイツ人。
彼も、ドイツ人だったに違いない。
碧い瞳で、じーっと見つめられると、動けない。
すると、彼は、優しいキスをしてくれる。
会いたかったよ、というように…私は、彼に恋している。
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